犬研を始めた原点の一つに、犬について調べようとしたとき、「どの情報を信じればよいのか分からなかった」という経験があります。
同じ行動について調べても、ある本と別の本では説明が異なり、Web上では正反対のことが書かれていることもありました。専門書であっても、書かれた時代や著者の立場によって見方が異なります。特に犬に関してはこの傾向が強いと感じました。
現在は、以前よりも多くの情報に触れられるようになりました。その一方で、根拠が十分に確認されていない情報、文脈の一部だけを切り取った情報、商品やサービスへの誘導を優先した記事もあります。AIが自然な文章で回答していても、内容が正しいとは限らず、実際には存在しない研究や参考文献が示されることもあります。情報が多いことと、確かな情報を得られることは、必ずしも同じではありません。
犬研では、情報が「どこから来たものなのか」「どこまで確かめられているのか」「その情報から何が言えて、何までは言えないのか」を考えながら記事を作成します。
出典をたどることを学んだ経験
2018年から2026年3月まで、DBCA 犬の行動心理カウンセリング協会のカリキュラムを通して、犬の行動や心理、応用動物行動学について学びました。約7年間で取り組んだおよそ600本のレポートでは、書籍や研究論文を調べ、参考文献をハーバード形式で記述することが求められました。
参考文献を示すのは、形式を整えるためだけではありません。どこまでがすでに示されている知見で、どこからが自分の解釈なのかを分けること。情報の出どころを明らかにし、読み手が元の資料までたどれるようにすること。その積み重ねが、情報の確かさを考える土台になると学びました。
ただし、出典が示されていれば、その内容が必ず正しいというわけではありません。誰が、いつ、どのような方法で示した情報なのかまで確認する必要があります。
できる限り元の資料を確認する
犬の行動について記事を書くときは、一般書やWeb記事だけで判断せず、可能な限り次のような資料を確認します。
- 元となった研究論文
- 複数の研究をまとめたレビュー論文
- 専門書や学術書
- 大学、学会、行政、専門機関などが公表する資料
- 法令や公的なガイドライン
一般向けの記事やSNSの投稿は、情報を知るきっかけにはなります。しかし、それだけを根拠にはせず、元になった研究や資料がある場合には、できる限りそこまでさかのぼります。
参考文献には、著者名、発行年、論文や資料の題名、掲載誌など、元の情報を確認できる内容を記載します。査読を受ける前のプレプリントを取り上げる場合には、そのことが分かるようにします。
一つの研究を「答え」にしない
研究論文は大切な情報源ですが、一つの研究だけで犬についての答えが決まるわけではありません。研究を確認するときは、結果だけでなく、次のような点にも目を向けます。
- 何頭の犬を対象にしたのか
- どのような犬種、年齢、生活環境の犬だったのか
- どのような方法や条件で調べたのか
- 家庭での暮らしと同じ状況と考えられるのか
- 研究者自身がどのような限界を挙げているのか
- ほかの研究でも同じような結果が得られているのか
研究によって結果が一致しない場合や、まだ十分に分かっていないことについては、そのことも含めてお伝えします。「研究で明らかになった」と断定するよりも、「この条件では、このような傾向が見られた」と説明するほうが適切な場合もあります。
分かっていることと、犬研の考えを分ける
記事の中では、できる限り次のことを区別します。
- 研究や資料から確認できること
- そこから考えられること
- 犬研として大切だと考えていること
- 日々の暮らしに取り入れる場合の提案
研究結果と、そこから導く考えや提案は同じものではありません。また、研究で示されるのは、多くの場合、一定の条件における集団の傾向です。その結果が、目の前にいる一頭の犬にそのまま当てはまるとは限りません。
犬にはそれぞれ異なる身体、感情、欲求、経験、生活環境があります。一つの行動について考えるときも、一般的な知見と、その犬自身の様子の両方を見る必要があります。
「分からない」をそのまま伝える
犬の行動や感情については、まだ分かっていないことが数多くあります。研究によって見解が分かれていること、根拠が十分ではないこと、現在の方法では確かめることが難しいこともあります。
そのような場合には、無理に一つの結論を出さず、「現時点では十分に分かっていない」「複数の見方がある」「この研究だけでは判断できない」ということも、そのままお伝えします。
根拠を確かめることは、あらゆることに確実な答えを出すためではありません。何が分かっていて、何がまだ分からないのかを区別するためでもあります。
広告や収益との関係
アフィリエイト広告を掲載していることだけで、その記事が誤っているとは限りません。しかし、商品の購入やサービスへの誘導が記事の主な目的になると、取り上げる情報や結論に偏りが生じる可能性があります。そのため、誰が、どのような目的で発信している情報なのかも、情報の信頼性を考えるうえで大切です。
犬研では現在、アフィリエイト広告を行っていません。
今後、犬研が作成した資料や商品を紹介する場合には、自らが提供するものであることを分かる形で示します。収益につながるかどうかを先に置いて、記事の結論を決めることはしません。
情報は見直し、更新する
研究は続いており、これまで正しいと考えられていた説明が、新しい研究によって見直されることもあります。
公開した記事についても、新しい知見が示された場合や、誤り、不正確な表現、参照元の問題などが見つかった場合には、必要に応じて修正・更新します。大きな変更を行った場合には、できる限り更新内容が分かるようにします。
犬研には、再始動以前(2026年以前)に作成した記事が数多くあります。現在の犬研が大切にしている考え方と情報の扱い方に照らし、出典や表現を含めて順次見直しています。
犬との暮らしを考えるための材料として
犬研は、一つの正解を示し、そのとおりにすることを求める場所ではありません。できる限り根拠を確かめながら、分かっていることと分かっていないことを分け、犬の行動の背景を考えるための材料をお伝えします。
その情報をもとに、「この犬は何を感じているのだろう」「なぜ、この行動をしているのだろう」「犬から見ると、この状況はどうなのだろう」と、目の前にいる犬について考えていく。犬は1頭1頭異なります。
情報を確かめることは、犬の立場から見て、犬を理解してから考え、ともに暮らす方法を探していくための土台だと、犬研は考えています。