犬が人をトレーニングする?

犬が吠えるとうるさいし、周囲にも迷惑をかけてしまうと感じてしまう。吠えはすぐに止めたいと思うでしょう。犬の食餌の時間が近くなったときに、ワンワン吠えたとします。そのとき人は、うるさいので食餌を与えれば静かになるだろうと思い食餌を与えます。

食べることと吠えることは同時にできないため、犬は食餌をはじめると吠えは止みます。吠え声は飼い主にとって嫌悪刺激になり、食べ物を与えることで止むとすると、負の強化が起きるため、吠えたときに飼い主が食べ物を与える行動は強化されていきます。

犬は吠えることで食べ物がもらえると学習します。吠えるという行動の後に、食べ物という強化子が得られるため、その行動は強化されます。
また、たくさん吠えたときに、いつもより早くもらえたとすると、吠え声はますます増えるでしょう。さらに、食餌の時間でないときに吠えてみたら、 おやつがもらえたとすると、おやつが欲しいときにも吠えるようになります。

このように、犬は吠え声を使って飼い主をトレーニングするかのように、吠えることで食餌やおやつが得られると学習していきます。吠えの後の行動に気をつけないと、人は気づかないうちに犬にトレーニングされてしまうでしょう。

負の強化
行為者(今回の場合は人)にとって望ましくない嫌悪刺激(犬の吠え)を除去することで報酬(静になる、周囲に迷惑がかからないなど)を与える。その結果、その行動(食餌やおやつを与える)が増えること。

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参考文献
アルバート P.A.・トールマン A.C. (2004) はじめての応用行動分析. 東京都,二瓶社
実森 正子・中島定彦 (2012) 学習の心理 第2版. 東京都, サイエンス社
島宗 理 (2019) 応用行動分析学. 東京都, 新曜社
杉山 尚子 (2005) 行動分析学入門 ―ヒトの行動の思いがけない理由. 東京都, 集英社

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