犬が排泄後に、地面を後ろ足でけって土や砂を飛び散らせることがあります。尿のマーキング行為のように、この行動は雄によく見られるようです。
この地面を後ろ足でける動作には、いくつかの理由があります。
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匂いを拡散させるため
土を掻くことで排泄物そのものの匂いを拡散させるほか、周囲に飛び散った土が草花を傷つけることで匂いを発し、その匂いも他の犬の嗅覚に届くのではないかと考えられています。
匂いを視覚的に際立たせるため
排泄後に周囲をひっかくような動作は、自分がつけた匂いを際立たせる目印のような役割を果たしていると考えられています。
排泄後に引っ掻くことは、地表に視覚的なサインを残すためで、引っ掻く行為そのものも、他の犬に対する視覚的な誇示を意味しています。
近くに他の犬がいて見られている状況では、この引っ掻く行動がより顕著になることが分かっています。
足裏から発する匂いをその場所に付けるため
もう1つは、足裏から発する匂いを、その場所に付けるためだと考えられています。
引っ掻くことで足裏にあるエクリン腺と呼ばれる汗線から出る匂いを地面に付け、それを飛び散らすよう広げることで、他の犬へメッセージを広く送る役割を持っています。
いずれも自身の匂いを周囲に拡散させる目的で行うようです。土や砂を排泄物に掛けて見えなくするように見えてもも、それは隠す目的ではなく、むしろ広く拡散したい意図があるようです。
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参考文献
フォーグル B. (2005) ドッグズ・マインド. 東京都, 八坂書房
Bekoff M. (1979) Ground Scratching by Male Domestic Dogs: A Composite Signal, Journal of Mammalogy Volume 60, Oxford, Oxford University Press.
Bekoff M. (2019) Ground Scratching by Dogs: Scent, Sight, and Ecstasy, PsychologyToday, https://www.psychologytoday.com/intl/blog/animal-emotions/201903/ground-scratching-dogs-scent-sight-and-ecstasy
Hart B.L. (1995) 動物行動学入門. 東京都, チクサン出版社