例えば人間の場合、病院の待合室で子供が1人で待っているのはとても不安です。でもお母さんや家族の人が一緒だと安心できることは、よく理解できると思います。大人であっても、重大な病気になってしまったときや、事業がうまく行かないときなど、先の見えない不安を抱えたときに、夫や妻、親友が側にいてくれることは心強く、不安が和らぐでしょう。信頼関係が築けているからこそ、ストレスを和らげることができます。
これは、社会緩衝作用(social buffering)と呼ばれています。一人のときよりも誰かと一緒の方が、ストレスを受けたときの回復が早く、その相手との関係が親密であればその効果は高くなるというものです。
こうしたことは異種である犬と人との間でも成り立つことが分かっています。両者の間に信頼関係が築けていれば、飼い主さんがそばにいると犬の不安は少なくなります。また相手が親しい犬よりも親しい人間の方が効果が高いという研究結果もあります(Tuber ら, 1996)。
犬が安心することができ、必要以上に興奮することなく穏やかに過ごすことができれば、問題行動と呼ばれるものは減っていくと思います。
人間も犬も社会性の高い生き物です。良い関係性、高い信頼関係を築いて、お互いが協力しあい協調できると、犬も人間も楽しい生活がおくれるでしょう。
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参考文献
Tuber D. S., Sanders S., Hennessy M. B., Miller J. A.,(1996), Behavioral and glucocorticoid responses of adult domestic dogs (Canis familiaris) to companionship and social separation. J. Comp. Psychol.
菊水 健史・永澤 美保 (2012) 犬のココロをよむ 伴侶動物学からわかること. 東京都, 岩波書店