犬の食べる欲求が満たされているか

 犬には毎日ちゃんとご飯をあげているし、痩せていないし、むしろちょっと太っているくらいだから、食べる物は満たされている。と思いますよね。確かに量であるとか、カロリーであるとか、栄養は満たされているかもしれません。人間は自分でご飯を作る、あるいは誰かに作って頂いて食べます。大体の人がそうやって食べていると思います。犬はどうでしょうか。手作りにしろ市販のフードにしろ、人間がフードのボウルに1食分入れて犬に与えていると思います。

 一旦犬から離れます。子牛は一日に多くの回数や時間をかけて母牛の乳頭を吸いますが、人工的に哺乳具で育てられる場合、1日2〜3分程度で終わってしまい、吸うという行動が満たされません。満たされない行動は転嫁されて、仲間の子牛を吸い始め、相手に炎症を起こさせたり、自身は毛を飲み込み、消化不良になってしまいます。成牛になっても続き、他の乳牛から吸乳してしまうこともあります。

 ブタは放牧されていると6〜8時間かけて土を掘り起こしながら、昆虫、ミミズ、植物の根などを食べます。通常畜産で飼育されている方法で人が食餌を与える方法では、30分程度で食餌が終わってしまいます。お腹は満たされているけれど、食べるという行動が満たされていない状態になります。こうした苦悩を抱えたブタは、仲間のしっぽをかじってしまう行動を見せますが、放牧のブタでは見られないといいます。

 犬に戻ります。そこで、犬本来の食餌方法を取り入れると、犬の食べるという行動が満たされるのではないか。と思うのです。ですが本来の犬の姿、本来の食べ方ってちょっと分からないですよね。例えばちょっと野生に近そうな野良犬の場合、人の出したゴミや残飯をあさって食べます。また犬に一番近い種であるオオカミにもヒントがあるかもしれません。

 今回は自分で食べ物を探して食べる。という行動に注目して取り入れてみます。例えばドライフードであればノーズワークマットに隠したり、私の家ではリビングの色々なところにフードを隠したりして、探索しながら食べるようにしています。ウェットフードであれば、コングなどに詰めるなどすると、食べるのが難しくなることで、頭や体を使い、食べるという行動が少しでも満たされると思います。ただボウルであげるだけでなく、そうしたことをいくつか取り入れると、犬の満足度は上がってくると思います。

本記事(画像を含む)は著作権で保護されています。複製・転用は法律により禁じられています。

参考文献
佐藤 衆介, (2005), アニマルウェルフェア―動物の幸せについての科学と倫理, 東京都, 東京大学出版会

関連記事