ポジティブトレーニングは、犬を傷つけない

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どうしてポジティブトレーニングなの?

 もしあなたが、望ましくない犬の行動に対して、罰を与えることで直そうとしているならば、その罰自体がエスカレートしていくことを心配する必要があります。

 口で言っても効果がなければ手が出てくる、それでも効果がなければさらに強い刺激を与えてしまいかねません。罰を与えたのにその行動が改善されないと、どんどん強い罰を与えてしまうことに…。
罰がエスカレートしていくことの恐ろしい点は、完全な終わりがないということです。

 例えばEカラーやスパイクカラーなどを使って改善が見られないときに、より強い刺激を与えようとすると、間違いなく犬を傷つけてしまうでしょう。ポジティブトレーニングであれば、そういった犬を傷つける器具などは使用せずに、学習することができます! たとえ褒めるタイミングを間違ってしまっても、犬を傷つけることにはなりませんね。

 罰を与えるようなトレーニング方法と、犬研が推奨しているポジティブトレーニングを比較しながらその特徴をご紹介いたします。

犬との信頼関係を壊したりしない

 犬のからだを傷つける外傷だけではなく、きもちを傷つける精神面のダメージでも、犬との信頼関係は壊れてしまいます。例えば、罰を与えると、犬は恐怖心を抱いたり、怒りの感情や敵意を持ったり、抵抗したりします。これでは、問題となる行動を修正したくても、うまくいかないばかりか逆に新たな問題を生んでしまい、問題が複雑になり、解決がどんどん遠くなってしまいます。

 ポジティブトレーニングで、ある行動が上手に出来たときに、犬がおやつをもらえたり遊んでもらえたりすることは、人と犬との信頼関係が増していくことにつながります。犬からすると「ある行動をしたら褒めてもらえた。うれしい! だからまたその行動をしよう!」となるわけです。
 たとえポジティブトレーニングがうまく行かなかったとき(おやつをあげるタイミングを間違えたり、褒めるタイミングを間違えたり)でも、犬との信頼関係を壊すことはありませんので、どんどんやってみましょう。

だれでも効果的に行うことが出来る

 罰を与えるトレーニング方法は、行動に対して「それは違う」ということしか伝えることができず、「何が正しいのか」を教えることができません。ポジティブトレーニングであれば、常に正解を教えていくため、問題の解決に直結しています。

 罰を与えるトレーニングでは、犬が間違った行動をしたときには、「必ず一貫して」罰を与える必要があります。間違った行動を1つ見逃しただけで効果が減ってしまいますので、なかなか大変です。しかし、ポジティブトレーニングでご褒美を使う方法なら、むしろご褒美をあげ忘れて時々になり、ランダムになることが、犬にとっては予測できない喜びとなり、強化性が高くなります。(変動比率強化)
 ポジティブトレーニングは、確実に正しいことを伝えることができ、且つ強化しやすい方法であり、効果的に早く行動修正出来る方法なのです。

犬も人間も楽しく行える

 罰を与えるトレーニング方法は、犬はトレーニングがつまらなくなり質が低下してしまいます。一方、飼い主さんもトレーニングがうまくいかず、不愉快な作業だと思うようになり、トレーニングが嫌になっていきます。なぜなら罰は、多くの場合それ自体が嫌悪刺激であるため、受ける側はもちろんのこと、使う側も不快なものだからです。

 ポジティブトレーニングなら、おやつや遊びなどの報酬がもらえるため、犬にとっては楽しさや喜びがあります。ご褒美をもらうたびに飼い主さんに対する印象が良くなっていくので、飼い主さんと犬の絆が深まることにつながります。楽しんでいる犬の姿を見ている飼い主さんも、もちろん楽しいですよね。楽しいと、犬も人もモチベーションが高くトレーニングを行うことができ、どんどん好循環となって、トレーニングがより一層進むようになりますよ。

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参考文献
アルバート P.A・トールマン A.C,(2004),はじめての応用行動分析,東京都,二瓶社
杉山 尚子, (2005), 行動分析学入門 ―ヒトの行動の思いがけない理由, 東京都, 集英社
ダンバー I,(2007),ドッグトレーニングバイブル,東京都,レッドハート
プライア K,(1998),うまくやるための強化の原理,東京都,二瓶社
吉野 俊彦,(2018),罰の効果とその問題点――罰なき社会をめざす行動分析学,心理学ワールド,東京都,日本心理学会

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