苦手なものに慣れされる

例えば踏切の前で、ワンワン吠えたり、すくんでしまって動けなくなったり、大きな音や振動など怖さから苦手になることはよくあります。

目次

拮抗条件付けと系統的脱感作

こうした苦手なものを克服するために、犬のトレーニングの手法でよく使われるのが、拮抗条件付けと系統的脱感作です。
拮抗条件付けは、例えば踏切の怖さと相反する快さ(オヤツ)を提示することで、恐怖心を減らしていく方法になります。踏切の音や振動を感じたら、大好きなオヤツを食べることで、踏切の音や振動への恐怖反応はなくなっていきます。
系統的脱感作は、徐々に刺激を増やして慣れていく方法になります。踏切の音や振動を、恐怖反応が出ないところまで距離をとり小さくして始めます。そこから拮抗条件付けを行い、少しづつ近づいていって刺激を増やしていきます。

鋭敏化の危険性

しかし、こうしたトレーニングでは苦手な刺激を犬に与えなければならなく、たとえ少ない刺激だとしても、不快なものにさらさなければならなりません。
慣れることとは逆に、刺激を繰り返し与えることで、恐怖反応が増えてしまうことがあります。こうしたことを鋭敏化と呼びます。鋭敏化は、与えた刺激が強いとき、そしてトレーニングの初期で起きやすいと言われています。

トレーニングによって慣れたとしても、踏切の音や振動に加え、車のヘッドライトなど、他の刺激が与えられることで、再び踏切の音や振動に対して吠えることが復活することがあります。
また鋭敏化してしまうと、その直後では車や自転車の音など、他のささいな音でも恐怖を引き起こすこともあります。

生活を広く見直す

ケースによって様々ですが、踏切だけが苦手ではなく、他の刺激にも敏感で、多くのことに怖がりな傾向を示すことがあります。そうした犬では、踏切に近づかない道を選ぶなど、まず苦手な刺激は避けるようにすることで、余計なストレスを与えないようにします。また日々の生活を見直して、不安要素を少なくしていくことで、怖がる傾向を減らしていきます。

トレーニングが全てではない

慣れさせようとして逆に鋭敏化してしまうことは考えられることです。なんでもかんでもトレーニングではなく、まずは環境を見直して変えることで、犬の不安を減らし、落ち着いて日々過ごせるようにすることが大切です。トレーニングそこからスタートすると比較的にスムーズに行えると思います。

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参考文献
上田 恵介, 岡ノ谷 一夫, 菊水 健史, 坂上 貴之, 辻 和希, 友永 雅己, 中島 定彦, 長谷川 寿一, 松島 俊也, (2013), 鋭敏化, 拮抗条件付け, 系統的脱感作 動物行動学辞典, 東京都, 東京化学同人
実森 正子・中島 定彦. (2019) 学習の心理 第2版. 東京都, サイエンス社
島宗 理. (2019) 応用行動分析学. 東京都, 新曜社
中島 定彦. (2019) 動物心理学. 東京都, 昭和堂

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