「生まれつき」の特徴は変えにくい

ダックスフントを訓練しても、グレイハウンドのように、速く走らせることは難しいでしょう。マルチーズを訓練しても、ボーダーコリーのように、ヒツジの群れを誘導させることは難しいでしょう。

体の大きさや足の長さなど、体型も大きな違いではありますが、1つには犬の脳が行動に適した運動活性を支えるものではないことが上げられます。

例えばそれは、犬種によって脳のドーパミン発現量が違うことからも分かります。ドーパミンは覚醒と運動活性を仲介する神経伝達物質になりますが、ボーダーコリーは熱気と活気があふれ、ヒツジの群れを追い立て誘導し移動させます。一方でマレンマ・シープドッグのような、のんびりとした犬種の動作は緩慢です。
この2種を比べたところ、ボーダーコリーの方がドーパミンの発現が4倍も高いということが分かりました。足の長さや体の大きさなど、見た目だけではなく、脳や臓器の機能など、見えないところにも「生まれつき」があります。

犬が吠えるということは、バセンジーなどの一部の犬種を除いて「生まれつき」ですので、吠えなくすることは難しいです。ですが、環境によって吠える頻度が増えた場合では、環境を変えることで、吠えを少なくすることが出来ると思います。遺伝子と環境の相互作用によって行動は作られます。

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参考文献
コッピンジャー R.・ファインスタイン M. (2016) イヌに「こころ」はあるのか. 東京都, 原書房
Hartl D.L (2021) エッセンシャル遺伝学・ゲノム科学. 東京都, 化学同人

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