犬を褒めることができているか

褒めるトレーニングをしましょうね。と言われることが多いと思います。人間が褒めているつもりでも、犬はこころよいと感じていない場合、褒めることは犬には伝わりません。

例えば、褒めるつもりで犬の頭を上から撫でるとすると、多くの犬は心良く思いません。試しに動画で撮影してみるといいと思います(やりすぎに注意です)。頭上に手が行ったとき、あるいは頭に触れたときに、犬が頭を避ける、首をすくめるなどの動きが少しでもあると、犬は嫌がっています。犬は上から頭上へ来るものを怖がることが多いです。撫でるのであれば、下から胸のあたり、脇腹のあたりが心地いいと感じてくれると思います。

しかし胸や脇腹であっても、触られるのが嫌な犬もいます。触られるのが嫌な場合、褒めるつもりで、撫でようとしても全く効果はありません。むしろ嫌なことがそこで起きています。トイレが上手にできたね。と撫でたとすると、トイレトレーの上でトイレをしたら嫌なことをされた。次からはトイレトレーの上でトイレをするのはやめよう。となってしまいます。

「撫でる」が褒めることにならない場合には「食べる」で始めます。食べ物は一次性強化子と呼ばれ、生得性強化子です。つまり生まれ持って備わっている、生きていくために必要な刺激です。生きていくために必要ですから、ほとんどの犬にとって強い動機づけ、モチベーションになります。トイレが上手にできたね。とオヤツをあげます。トイレトレーの上でトイレをしたら嬉しいことが起きた。次もトイレトレーの上でトイレをしよう。となります。

触られるのを嫌がる場合は、好きになるように練習するようにしましょう。といわれますが、嫌いなものに慣れるようにトレーニングする場合、人間側がやりすぎてうまくいかず、逆に嫌いになることは多いです。急がずに犬の様子を見てゆっくり待つ、短い時間で切り上げる、無理にやらない、犬を尊重する、など人間側から一方的にならないように行うことが大切です。

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参考文献
アルバート P.A.・トールマン A.C. (2004) はじめての応用行動分析. 東京都,二瓶社
杉山 尚子 (2005) 行動分析学入門 ―ヒトの行動の思いがけない理由. 東京都, 集英社
ダンバー I. (2007) ドッグトレーニングバイブル. 東京都,レッドハート
プライア K. (1998) うまくやるための強化の原理. 東京都,二瓶社

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