
家に帰ると、私の犬がボールをくわえて迎えに来ることがあります。遊んでほしいのかな?と思って、そのまま庭に出てボール遊びをすることもあります。
でも、いつもボールを持ってくるわけではありません。違うおもちゃをくわえていることもあれば、何も持っていないこともあります。何も持たずに迎えに来たあと、急いで部屋に戻ってボールを取ってくることもあります。しかも、ボールを持ってきても、そのあと遊ばないこともあります。
こうして考えてみると、ボールをくわえて迎えに来るのは、単に遊びたいからというだけでもなさそうです。
では、ほかにどんな理由が考えられるのでしょうか。いくつか研究を調べてみました。
飼い主との再会では何が起きるのか
Rehn & Keeling(2011)は、分離に関する問題のない家庭犬12頭を対象に、飼い主が30分、2時間、4時間留守にしたときの行動を調べました。
留守番中の行動には、同じ時間帯で比較すると大きな違いは見られませんでした。しかし、飼い主が帰宅したときには違いがありました。30分後に比べて、2時間、4時間後の再会では、犬から飼い主への働きかけや尾振り、身体活動などが増えました。
この研究では、飼い主との再会時の行動が、それまで離れていた時間によって変わることが確認されています。
おもちゃを持ってくることを調べた研究ではありませんが、飼い主が帰ってきたという出来事自体が、犬の行動に関係していることが分かります。
犬は「物」を含めて人とやりとりすることがある
Gaunet(2010)は、犬が自分では取れないおもちゃを飼い主に取ってもらう場面で、どのように人へ働きかけるかを調べました。
実験では、犬たちが飼い主を見たり、おもちゃのある方向を見たり、両者の間で視線を行き来させる行動が見られました。また、おもちゃを受け取ったあとには、それをくわえたまま飼い主を見る行動も観察されています。
犬は人に何かを伝えようとするとき、人を見るだけでなく、対象となる物と人の間で視線を動かすことがあるようです。
犬と人のコミュニケーションというと、犬が人を見る、人が犬に声をかけるといったことを思い浮かべますが、そこに「物」が加わることもあるんですね。おもちゃは遊ぶための物ですが、人とのやりとりの中でも役割を持つことがあるというのは興味深いです。
おもちゃを介したやりとりの研究
もう一つ、2026年に発表された興味深い研究がありました。Sommese et al.(2026)は、物の名前を多く学習することが確認されているボーダーコリー10頭と、比較対象となるボーダーコリー21頭について、おもちゃへの関わり方を調べました。
実験前に2週間、飼い主とおもちゃで遊ぶ期間を設けています。その後、飼い主が犬に反応しない状態で、おもちゃに対してどのような行動をするのかを観察しました。
結果は、おもちゃに関わる時間には、2つのグループの間で明確な違いは見られませんでした。しかし、物の名前を多く学習することが確認されている犬たちは、おもちゃをくわえたまま飼い主に働きかける行動をより多く示しました。特に、新しいおもちゃを飼い主のところへ持っていくことが多く見られました。
研究者らは、物を介して人と社会的なやりとりをすることへの関心が関係しているのではないかと考えています。ただし、これまでの飼い主との遊びの経験などが影響した可能性もあり、理由が明らかになったわけではありません。
また、今回の研究対象は、特定の学習能力を基準に選ばれた犬たちと、その比較対象となる犬たちです。いずれもボーダーコリーであり、一般の家庭犬でも同じ傾向があるかどうかは分かりません。
それでも、おもちゃそのものへの関心には明確な違いが見られなかったのに、おもちゃを持って飼い主に働きかける行動には違いがあったというのは面白い結果です。
では、なぜおもちゃを持ってくるのか?
遊びたいからおもちゃを持ってくる。まず考えられるのはこれでしょう。実際、私の犬もそのままボール遊びになることがあります。
しかし、ほかの理由も考えられそうです。
飼い主との再会時には、犬から人への働きかけや身体活動などが増えることがあります。そのような場面で、おもちゃをくわえる行動が起きているのかもしれません。
また、犬はおもちゃを介して飼い主に働きかけることがあります。もしかすると、遊びを始めることだけでなく、おもちゃを持って飼い主と関わること自体が、帰宅時の行動の一部になっている場合もあるのではないでしょうか。
もちろん、こうしたことは同時に起きる可能性もあります。飼い主が帰ってきたことで活動が増え、遊びたい気持ちもあり、おもちゃをくわえて飼い主に働きかけるということも考えられます。
ただし、今回紹介した研究は、帰宅した飼い主に犬がおもちゃを持ってくる理由を直接調べたものではありません。研究からいくつかの可能性は考えられますが、実際の理由が確認されたわけではありません。
私の犬の場合はどうだろう?
これまでは、私の犬がボールをくわえて迎えに来ると、遊んでほしいのかな?と思うことが多かったです。
でも、今回の研究を調べてみると、ほかにも気になることが出てきました。
例えば、最初からボールをくわえているときと、迎えに来てからわざわざ部屋へ取りに戻るときでは、何か違いがあるのでしょうか。
ボールを持ってきたあと、私の犬は私を見ているのでしょうか。それともボールをくわえたまま歩き回っているのでしょうか。ボールと私の間で視線を動かすことはあるのでしょうか。
また、私がボール遊びを始めるときと、始めないときでは、そのあとの私の犬の行動にどんな違いがあるのでしょう。
考えてみると、これまで気にしていなかったことがいろいろあります。同じようにボールをくわえて迎えに来る行動でも、その前後をもう少し見てみると(前はあまり見れないと思いますが)、今まで気づかなかったことが見つかるかもしれません。
次に私の犬が迎えに来たときには、そのあと何をするのか、もう少し見てみようと思います。
参考文献について
この記事では、飼い主と離れていた時間と再会時の犬の行動について Rehn & Keeling(2011)、犬がおもちゃを介して飼い主に働きかける行動について Gaunet(2010)を参考にしています。また、おもちゃへの関わりと飼い主との社会的なやりとりについて Sommese et al.(2026)を参考にしています。
参考文献
Rehn, T., & Keeling, L. J. (2011). The effect of time left alone at home on dog welfare. Applied Animal Behaviour Science, 129(2–4), 129–135. https://doi.org/10.1016/j.applanim.2010.11.015
Gaunet, F. (2010). How do guide dogs and pet dogs (Canis familiaris) ask their owners for their toy and for playing? Animal Cognition, 13(2), 311–323. https://doi.org/10.1007/s10071-009-0279-z
Sommese, A., Miklósi, Á., Nostri, S., Temesi, A., & Fugazza, C. (2026). Toy exploration in gifted word learner dogs and typical dogs. Animal Cognition, 29, Article 24. https://doi.org/10.1007/s10071-026-02047-3
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