犬の狩猟の歴史

旧石器時代の後期に、人間はそれまで重い石斧で直接打撃を与えて獲物を仕留めていましたが、後に石の矢じりを使った弓矢が広く使われ始めました。獲物との距離を取ることで安全性が高くなり、仕留める確率が高くなりました。こうした飛び道具が好都合であることが分かると、獲物を追ったり、追い詰めたり、捕らえたりするのに犬を使うようになっていきました。

ドイツのオーバーカッセルにある約1万4千年前の旧石器時代後期の洞窟から、家畜化された犬の下顎の骨が発見されています。またイスラエルのヨルダン渓谷で発見された約1万2千年前の遺跡では、人間と一緒に埋葬された子犬の骨が発見されています。こうした発見からも、古くから犬と人との結びつきがあったことが分かってきます。

犬との共同作業によって狩猟効果が上がり、犬は狩猟のパートナーとして、人間と群れを共にすることとなりました。それは猟犬の犬種の多さにも現れています。優れた視力を使って走力で獲物を追跡し捕獲するタイプ。優れた嗅覚と通る吠え声で獲物を追うタイプ。仕留めた鳥を回収するタイプ。獲物を探し出し、その位置を静かに示すタイプなど猟犬の種類はじつに様々です。

このように犬は人間の狩猟のグループに入り、それぞれの役割を果たすように選択と繁殖が行われ、古くから共に行動してきました。
現在でも、レトリバーは回収が得意であったり、嗅覚を使うのが得意な犬は、麻薬探知犬や警察の捜査で活躍しています。またアジリティーが得意だったり、ドッグス ポーツが得意な犬もいます。人間と一緒に何か作業を行うことが得意な犬は数多く存在しています。古く狩猟のために組み込まれた犬の行動は、今でも数多く見ることができます。

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参考文献
Clutton-Brock J. (1999) 犬の起源:家畜化と初期の歴史. 犬 : その進化 行動 人との関係. 東京都, チクサン出版社
Davis S.J.M. & Valla F.R. (1978), Evidence for domestication of the dog 12,000 years ago in the Natufian of Israel. Nature volume 276, London, Independently published
Nobis G. (1979), Der älteste Haushund lebte vor 14,000 Jahren, Umschau19, Umschau. Frankfurt
藤田 りか子. (2015) 世界の犬種大図鑑. 東京都, 誠文堂新光社

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