犬の散歩は周囲への安全が第一

犬の散歩で大切なことは、まず周囲への安全性です。犬は突然飛びかかったり吠えかかったりすることがあります。普段はおとなしい犬でも、突然の音や光、飼い主や他の人の急な動き、他の犬の急な動きなど、思わぬ刺激が突然の恐怖や不安になることがあります。予測不能な犬の飛びかかりや吠えがあることを、じゅうぶん注意しておく必要があります。

多くの動物では、恐怖や不安といったことが増し、危機的状況になったときに「闘争か逃走か」という反応をみせるといわれています。散歩中の犬は、リードで繋がれた状態にあるため、逃げることはできません。じっと見てくる人や、上から覆いかぶさるように頭を撫でてくる人、スケートボードに乗った人、苦手な犬などがやってきたときに、たとえ恐怖を感じても、その場から立ち去れません。「闘争か逃走か」のうち「逃走」は選択肢からなくなります。残ったものは「闘争」です。苦手な犬に遭遇したときに、飛びかかるように吠える可能性があることを理解しておかなければなりません。

法律でこの他者に対する安全の責任について見ておきましょう。民法の718条には「動物の占有者等の責任」という項目があります。

民法(動物の占有者等の責任)
第七百十八条 動物の占有者は、その動物が他人に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、動物の種類及び性質に従い相当の注意をもってその管理をしたときは、この限りでない。

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とあります。例えば人を噛んでしまったとすると、賠償する責任があります。と示しています。ただ、かなり注意をしたけれど噛んでしまった場合、どれだけ注意をしたのかを証明することで、責任を負わない、あるいは負う大きさが低くなる可能性があるとされています。

こうしたことは犬が犬を噛んでしまった場合にも当てはまるようです。2021年の5月に、犬同士の噛みつきトラブルで、噛んでしまった犬の飼い主さんに賠償命令の判決が出ています。詳しい状況は分かりませんが、小型犬にノーリードの大型犬が近づき、小型犬が唸ったところ、近くにいた中型犬が小型犬を噛んでしまった。とのことです。

犬を外に連れ出しているときは、周囲への安全を一番に考え、人だけでなく犬に対しても、じゅうぶん注意したいですね。

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参考文献
上田 恵介, 岡ノ谷 一夫, 菊水 健史, 坂上 貴之, 辻 和希, 友永 雅己, 中島 定彦, 長谷川 寿一, 松島 俊也, (2013), 闘争か逃走か, 動物行動学辞典, 東京都, 東京化学同人
産経ニュース (2021) 犬同士の噛みつきトラブル、飼い主に賠償命令. 産経新聞. 次より閲覧可能: https://www.sankei.com/affairs/news/210514/afr2105140030-n1.html [閲覧日: 2022年10月1日]
e-gov法令検索 (2015) 民法. e-gov [オンライン]. デジタル庁. 次より閲覧可能: https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089 [閲覧日: 2022年10月1日]

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